小児科医のアドバイスが満載!新刊「発達障害 最初の一歩」のご紹介

「うちの子、ちょっとことばが遅い?」
「あれ?視線が合ってない?」
「ちっとも じっとしていないんだけど、大丈夫?」

子どもの成長のペースはそれぞれ。

でも「発達障害」が広く知られるようになり、ささいな「ちがい」も不安につながるようになっているのではないでしょうか。

「発達障害かも…」と思っても、専門機関は敷居が高い。
そんなとき、かかりつけ医に診察のついでに不安を打ち明けられたら。
たくさんの子どもを見てきた医師が、成長の経過を一緒に見守ってくれたら、どんなに心強いでしょうか。

「なかなか相談できるところがなくて」という方にオススメなのが、20万人以上の子どもを診てきた小児科医・松永正訓先生の「発達障害 最初の一歩」(中央公論新社)。
「診断は急いでつける必要はない。小学校に上がるくらいまでにゆっくりと決めていけばいい」と、子どもの成長に伴走する、医師ならではのアドバイスが満載です。
たくさんの事例とともに、気になる次のことについて、やさしく解説してくれています。

・発達障害の3要素(自閉症スペクトラム障害、ADHD、LD)と それらが明らかになるのはいつか
・療育の効果 / 薬物療法の効き目
・発達指数と知能指数のちがい
・「ABA」「TEACCH」「感覚統合」(療育の方法)と それぞれが得意とする年齢と特性
・一番やってはいけないこと / 一番重要なこと
・手帳の取得について
・きょうだいのサポート
・学校の選び方
・ADHDの子どもをどう育てるか
・LDの子に家庭でてきること

発達障害は治る?

発達障害は「早期発見が大事。療育はなるべく早く開始した方がいい」とされています。しかし「それはお子さんの状態次第。悪性疾患ではないので、一日でも早く、ということはない」と松永先生はいいます。

療育には効果もありますが、「限定的で多くの力をつぎこんだ分に見合う見返りはない」という声も。松永先生はそれを「一面の真実」だとし、「疲弊するまでやらなくてもいい。家庭内がギスギスするまで療育をする必要はない」と、やり過ぎへの注意を促しています。

松永先生のクリニックでは、療育センターへの紹介状をかくこともあれば、「たくさん遊んでください」というアドバイスだけのことも。それで親子のコミュニケーションが生まれ、うまく育っていくことも多いそうです。

発達障害の特性は消えることはないので、療育で完治することはありません。しかし、発達障害がもたらす困りごとの多くは、周囲との軋轢によるものなので、「どうやって社会に適応させていくか」については、様々なサポートができます。

たとえば、「ABA」を使って問題行動を軽減したり、「TEACCH」で、周囲の環境を子どもに順応させる工夫をしたり。

「発達障害児の治療目標の一つは、二次障害にならないようにすること」だといいます。

正しい診断をつけることが大事

私たちの教室(まなび舎のびーく)でも、悩み苦しむ子どもたちにたくさん出会ってきました。

例えばLDのお子さん。勉強しても成果がでず、「努力不足」だと自分を責め続けているうちに、すっかりやる気を失っていました。しかし、LDは先天的な脳の働きの障害で、決して怠けているわけではないのです。

「子どもにLDの特性を正確に伝え、苦手の領域があってもそれは特性のせいだから、自分を卑下しなくてもいいことをわからせて」と松永先生がいうとおり、再び前を向くには、本人が自分の苦手を知り、努力不足ではないと納得する必要がありました。

「最も大事なことは、早期に診断を付けてやり、本人に特性を理解させ、周囲の大人もその子の特性をよく理解すること」。

知能検査の結果があれば、客観的データで努力不足ではないことを示すことができ、本人や周囲の理解を得られやすいと思います。

「発達障害を受け入れていないと、そんな意識はなくても、子どもから見ればある種の虐待になるような対応をしてしまうこともあるかもしれません」

たしかに、周囲が発達障害を理解していないと、叱られたり、否定されたりすることが続いてしまいます。ストレスが積み重なると、二次障害につながっていきます。「二次障害の治療は極めて困難」で、適切な診断のもとに特性を理解していくことは、とても重要です。

ただ、「発達障害の診断は微妙で難しい」もの。診断がつかず、苦手を説明できずに苦しんでいるお子さんも多くいると思います。「グレーゾーン」という言葉をよく聞きますが、症状が軽いからといって、つらさが軽くなるわけではありません。

だから、診断がついていてもいなくても、よく観察して、苦手を見つけていくことが重要だと思います。そして、「得意なところを見つけて、それを褒めて伸ばして。そうすることで自信をつけていく」。叱られることや否定されることが、どうしても多くなってしまうので、それを打ち消していけるよう、「ほめること」が本当に大事だと思います。

うまくやっていくことはできる

社会の中にマイノリティーを尊重する流れが生まれつつある一方で、世間の空気はおおらかさを書き、他者に不寛容になっているのではないか。
松永先生の指摘には、マイノリティーである発達障害の子を取り囲む環境の厳しさを思います。

でも、子どもたちを、特性のために苦しませてはいけないのだと思います。

「教育は、長くやればやるほど効果を生む。粘り強く教育をしていくのは有効な解決策。教育というのはすぐには効果がでない。それでも信じて継続していくのが教育。」

子どもたちが自分を理解し、特性とうまくつきあい、自分の道を切り拓いていくこと、それを受け止めてくれる社会があることを信じ、保護者の方たちと一緒に、粘り強く教育に向き合っていきたいと思います。

 

本書のはじめに登場する「言葉の出ないカッ君」の章は、「ご両親がカッ君の特性をわかった上で小学校生活を送らせてやれば、案外うまく行きそうです」というむすびで終わります。

発達障害は治らない。でも、周囲に理解があれば、うまくやっていくことはできる。

ぜひ、多くの方に読んでいただき、「うまくやっていけるように」を一緒に考えていけたらと思います。


松永正訓先生をお招きする、

のびーくセミナー「発達障害の子どもたちに学んだこと~親子に寄り添う医師の視点から~」(11/22開催)

の受付を開始しました! 詳細・お申込みはこちらから

【10/22追記】都合により、本セミナーは延期となりました。ご関心をお寄せいただいた方には申し訳ございません。新たなスケジュールが決まりましたら、改めてご案内いたします。